メロトロンの傑作FocusUはオランダ以外ではMoving Wavesとして発売された。
今日の1曲
エディー・ヴァン・ヘイレンの故郷がオランダで,幼少からピアノを習っていたことを知りました。そこで、「癒しのメロトロンMellotron」を軸に栄光のオランダプログレッシブロックを1969年から順に聴きなおしてみました。
アムステルダムは、ニューヨークや京都などとともにヒッピーの聖地になってフラワーチルドレンが集まっていました。
ベトナム戦争の展開と終結が音楽に及ぼした影響も顕著でした。
[ 1969年 ]
Ekseptionの成功、Earth&Fire結成、Focus結成と反戦ミュージカルHair
ハーグ王立音楽院で優秀な成績を修めたRick van der Lindenは、1968年にキースエマーソンのナイスの公演でバッハのブランデンブルグ協奏曲を見て、Ekseptionのクラシックロックの方向性を決定。1969年にベートーベンの運命を編曲して5週間1位になる。同年の1stアルバムで、オランダで最初と思われるメロトロンMellotronをG線上のアリアAirで使用。
Ekseption G線上のアリア Air
https://www.youtube.com/watch?v=C_I031TWIXE
2:47あたりからメロトロンM300のストリングス・メロトロンがバックに使用されていると思われる。
オランダ初の全米ビルボード1位となったヴィーナスのショッキング・ブルーに続いて、女性ボーカルJerney Kaagman, 双子の兄弟 Chris and Gerard KoertsがビートバンドEarth&Fireを結成し、シーズンでデビュー。日本を含め、世界的にヒットする。
Focusが結成され、12月から翌年6月まで、反戦ミュージカルHairのサポートバンドになる。
[ 1970年 ]
Focus1stアルバム
エクセプションがヒット曲を連発。メロトロンも使用しているがバックに流す程度だった。
アース&ファイアーもビート系でヒット曲を出し続ける。
Ekseption - Italian Concerto
https://www.youtube.com/watch?v=hcBMOMPTj5o
1:39 控えめだがチェンバロのバックでストリングスメロトロンが聴こえる。
Ekseption - Italian Concerto Live
https://www.youtube.com/watch?v=8nh-j2Z81pQ
メロトロンは未使用だが、1:18のチェンバロ(クラビネット)が素晴らしい。
Focusが1stアルバムを発表し、インスト曲シリーズ「Focus」の第1曲目Focusでメロトロンを使用する。
[ 1971年 ]
メロトロンの傑作FocusUとメロトロンによるEarth and Fireの転身
エクセプションはオランダでヒット曲が続く。メロトロンの使用は控えめ。
Ekseption "Ave Maria"
https://www.youtube.com/watch?v=zRIi_BfW-UU
Rick van der Lindenの情熱が伝わる映像。控えめだが、2:18のエンディングでメロトロンが使用されていることが感じられる。
1971年10月、Focusがメロトロン史上の傑作FocusU(オランダ以外ではMoving Waves)を発表。LPはオランダで4位、全米で4位、シングルHocus Pocusも(日本では「悪魔の呪文」として)ヒット。
Focus - Le Clochard
https://www.youtube.com/watch?v=fc1KAtDjORc
Hocus Pocusに続くA面2曲目。メロトロン史上屈指の名曲
ヤン・アッカーマン=作曲・ギター タイス・ヴァン・レアー=メロトロン
Focus II
https://www.youtube.com/watch?v=ike5HEWMrX8&list=PLA2-nXsHvm3JR4XJivpexzuOEtBIz-JiY&index=7
2:32 天空を舞う癒しのメロトロン
Eruption
https://www.youtube.com/watch?v=t3_hJ_032Z8&list=PLA2-nXsHvm3JR4XJivpexzuOEtBIz-JiY&index=8
5:08 癒しのメロトロン
17:17 メロトロンによる別次元の音
Earth and FireもシングルA面のInvitationでハモンドオルガンを使用。
B面の2ndアルバムの先行シングルヴァージョンSong of the Marching Childrenでは突如メロトロンを導入し、プログレッシブバンドに転身。
Earth and Fire - Song of the Marching Children シングルヴァージョン
https://www.youtube.com/watch?v=ZNzZkAd-90o
LPヴァージョンと比べるとまだ未完成。ここから練り上げられたことがわかる。
次のLP先行シングルStorm And ThunderはA面でメロトロンを使用。
同じバンドか?と思えるほど、ビートバンドの面影は全くない。
Earth & Fire - Storm and Thunder (Lyrics)
https://www.youtube.com/watch?v=buLyiIJKCxE
2ndアルバムSong of the Marching Childrenは前作と全く異なるトータルアルバムになる。
メロトロンはEkseptionの使用していたものと同じとの情報もある。
Earth and Fire - Song of the Marching Children Studio LPヴァージョン
https://www.youtube.com/watch?v=-FZ1q7UxviQ
2:18からメロトロン。シングルヴァージョンと歌詞も異なり、メロトロンサウンドもスケールアップ
日本盤シングル1971年8月Song of the Marching Children
オランダ本国とはAB面が逆。InvitationがB面になっている。
[ 1972年 ]
メロトロンの最大ヒット曲Earth and Fire / Memories
Earth and Fire - Song of the Marching Children Live ヴァージョン
https://www.youtube.com/watch?v=QoQXhRCxILQ
0:30メロトロンライブの貴重なカラー映像。Studioヴァージョンよりさらに深遠なメロトロン。
Earth & Fire - Memories
https://www.youtube.com/watch?v=d0vT-ERKSFs
世界的にも珍しいメロトロン漬けシングルヒット。
オランダで2週間1位。
Focusは2枚組LP「FocusV」を発表するがメロトロンは未使用。
Focus - Sylvia (Live at Top Of The Pops, UK / Live at TopPop, NL - 1972)
https://www.youtube.com/watch?v=5YxNCL39wBI&list=PL8a8cutYP7fq74uWwQ-pBA8CYHkdm2Qy2&index=3
インストで全英4位のヒットになった名曲。
Focus - Elspeth of Nottingham
https://www.youtube.com/watch?v=qEZdXfcOdLY&list=PL8a8cutYP7fq74uWwQ-pBA8CYHkdm2Qy2&index=7
Jan Akkermanの美しいリュート
[ 1973年 ]
Earth and Fireのメロトロン大作Atlantis
Focusのシングル「シルヴィア」が全英4位。英メロディ・メーカー誌での人気投票で、10年間連続でギタリスト部門のトップにいたエリック・クラプトンを抜いて、ヤン・アッカーマンがトップとなる。
EARTH AND FIRE は全編メロトロンが使用されたトータルアルバム Atlantisを発表。イタリアンプログレッシブロックの全盛期と重なる。シングルMaybe Tomorrow, Maybe Tonightはオランダで3位となる。
EARTH AND FIRE - Atlantis
https://www.youtube.com/watch?v=KwpBkZhpGsw&t=1517s
EARTH AND FIRE - Atlantis 1973 当時の映像
https://www.youtube.com/watch?v=tm1APRmVgGk
Earth And Fire - Maybe Tomorrow, Maybe Tonight Live
https://www.youtube.com/watch?v=EGsIHi74LrE
0:07、1:15でメロトロンM400の実演が見れる。
Earth and Fire - Maybe Tomorrow Maybe Tonight. Studioヴァージョン
https://www.youtube.com/watch?v=yL6rMomAA40
0:11メロトロンM400が映る
エクセプションのトリニティーを最後にRick van der Lindenが脱退。
Ekseption - Romance
https://www.youtube.com/watch?v=23x-Bcs3TAQ
冒頭で明らかにメロトロンが聴こえる。Traceへの移行が感じられる。
[ 1974年 ]
Focusの傑作Hamburger Concerto 〜 Trace 1st でメロトロンが爆発
PFMとともにヨーロッパプログレッシブロックとして人気を誇ったフォーカス
Focus の Hamburger Concerto1974年1月録音、4月リリース。
タイスは力強さと目的を持った最初の作品と評価し、マイク・ヴァーノンもMoving Wavesとともにベストアルバムに挙げている。
Focus - Hamburger Concerto
https://www.youtube.com/watch?v=xI5ARFrBqAA
11:20 La Cathedrale de Strasbourg メロトロンではないが厳粛な素晴らしいコーラス。
37:08 最終曲の最終パートOne for the roadでコーラスメロトロンとARP2600シンセサイザーが唸る。39:45壮大なコーラスメロトロンで幕。
Focus - FocusU
https://www.youtube.com/watch?v=M_sh98umh7E
1974年6月 メロトロン入りのライブ(0:00 - 4:25)
1stアルバムTraceからのシングルカット
Rick van der LindenがキーボードトリオTraceを結成し、全編においてメロトロンが爆発する1stアルバムTraceを発表。イギリスで権威のあるライブ番組にも出演。Rick van der Lindenはキース・エマーソン、リック・ウェイクマンと並ぶキーボーディストだった。
Trace Gaillarde Mellotron実演ライブ
https://www.youtube.com/watch?v=8vsQVsib9Kk
0:33右手でハモンドを弾きながら、左手でストリングスメロトロン
1:06 上からのアングルで捉えた凄い映像。ストリングスだったメロトロンをコーラスに切り替えている。5:42からストリングスメロトロン。上からの映像はカッコよすぎる。オランダのテレビ番組のスタッフに敬服だ。
6:40 エンディングもコーラスメロトロン
Trace Gaillarde The Old Greay Whistle Test 1974 BBC
https://www.youtube.com/watch?v=kndiVcSos5c
5:58 ストリングスメロトロン
Trace / Trace 全曲
https://www.youtube.com/watch?v=7re8_gDZOFI&t=1663s
5:00 Gaillarde ストリングス+ブラスのメロトロン二重奏
18:29, 20:00 小曲の中にストリングス+コーラスのメロトロン。
27:40 Progression Moog+Strings Mellotron によるB面のハイライトで、短く編集されてシングルカットされた。
38:18 Memoryというタイトルのようにリック・ヴァン・ダー・リンデンにとって最も重要なパートのようだ。癒しのコーラスメロトロン。41:35ドラムソロの直前にブラス系メロトロン。46:00再び冒頭のコーラスメロトロン
45:20 最終曲Final Traceのラスト数秒でもMemoryのフレーズ。
トレースは、1975年の次作BirdsのB面の大作King Birdのシングルヴァージョンを先行シングルとして1974年に発表。
Trace / Birds single version
https://www.youtube.com/watch?v=tWTN2mcxvRA
39:45がシングルヴァージョン。コーラスメロトロンから始まる。翌年のLPではドラムスが交替し、テーマのメロディー以外はほとんど異なる内容。
Earth&Fire は、1974年6月、これもメロトロン漬けのLove of LifeがTo the world of futureの先行シングルとして発売し、オランダで2位のヒット。
Earth&Fire - Love of Life
https://www.youtube.com/watch?v=Pp0gTI4BjrE
現実と非現実の境界線で吸い込まれるようなメロトロン
[ 1975年 ]
ベトナム戦争終結 Trace / Birds
ベトナム戦争終結により、アムステルダムのヒッピームーヴメントも終焉。
アース&ファイアーは劇的に変化。To the world of futureがプログレッシブロックバンドとしての最後の作品といえる。
Earth & Fire - Only Time Will Tell
https://www.youtube.com/watch?v=WXLnD30_a7A
LPからカットされた寂寥感あるメロトロン曲。オランダで12位。
1975年ではケストレルと並んで世界一では。
Earth & Fire - Thanks For The Love (1975)
https://www.youtube.com/watch?v=MmqXh6ALZdI
ベトナム戦争終結で憑りつかれた魔法が解けたように全く別のバンドに変化。
Le Ormeの1976年のCanzone d’amoreを思わせる。オランダで8位。
一方で、トレースは2ndLPのBirdsで、ダリル・ウェイのウルフにいたイアン・モズレーにドラムスを替え、ELPのようなキーボードトリオの音を極める。
エクセプション時代にできなかったことを全て叩き込んでいるようだ。
Trace - Bourrée
https://www.youtube.com/watch?v=j3MIFrkkAM0
1曲目。エクセプションからのクラシックロックの極めつけ。メロトロン未使用。
Trace - Opus 1065
https://www.youtube.com/watch?v=K493lE0wDbQ
イントロから20秒のストリングスメロトロン、7:05からラストのフェードアウトに癒される
Trace - King-Bird
https://www.youtube.com/watch?v=8vPd5OwJ80k
20分間の緩急組曲で、随所にメロトロンが使用され見事としか言えない。
11:40のコーラスメロトロンから14:47までがこの曲の中間のハイライト。13:06のブラス系のメロトロンが頂点。
20:00から20:42のエンディングでコーラスメロトロンが響き渡る。パイプオルガンが楽器の王様で、メロトロンは女王という雰囲気。続く「回想」曲でもコーラスメロトロンが余韻を残す。
Focusは前作で力を出し尽くしたように、1975年10月発売のMother Focusは読売新聞の批評でもFather Bach以外にかつてのFocusは感じられないと書かれた。反戦ミュージカルヘアーから始まったFocusもその使命を果たしたようだ。
"Father Bach"
https://www.youtube.com/watch?v=hwnqQy9Q0-A
マタイ受難曲第1曲を編曲。メロトロンは未使用。
[ 1976年 ]
オランダ・メロトロンの最後の輝き Trace / White Ladies
トレースも前作Birdsで力を出し尽くしたように、エクセプションのメンバーのサポートで1976年に3rdアルバムWhite Ladiesを発表。
前作のような鋭さはなく、穏やかなトータルストーリーとなっている。
Trace / White Ladies 1976
https://www.youtube.com/watch?v=uaItGq19wRE
38:45 Traceラストアルバムの最終曲も、感涙のコーラスメロトロンで幕。
タイス・ヴァン・レアーは、ヨーロッパのマイナーなコードから離れて幸せな音楽を作りたいと述べ、ヤン・アッカーマンはFocusを離れる。
Focusは現在に至るまで、タイス・ヴァン・レアーを中心に活動している。
Focus - Focus V
https://www.youtube.com/watch?v=27uhBtNl2EQ
未発表音源などによるShip of memoriesから。
[ 1977年 ]
栄光のオランダ・プログレッシブ・ロック
自分にとってオランダ・プログレッシブロックの最後の輝きは、1977年、Finchの3rdアルバムの1曲目 Unspoken Is The Word。
Finch / Unspoken Is The Word 1977年
https://www.youtube.com/watch?v=c-tH3E8JnFQ
イタリアのLocanda delle fateも1977年だった。
Earth & Fireは1979年にプログレッシブロックとの決別ともいえる「Reality fills fantasy」発表し、Weekendがオランダやドイツで1位になる。
Earth & Fire - Weekend
https://www.youtube.com/watch?v=jbvj8KU57aw
Earth & Fireは最後のアルバム1982年のIn a State of FluxまでMellotronを使い続けました。
Van Halen - Jump 1984年
https://www.youtube.com/watch?v=bq-potK_7Ts