2012年05月03日

ニュー・トロルスNew Trolls IBIS来日 第2回イタリアン・プログレッシヴ・ロック・フェスティヴァル part 3

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上:UT ( New Trolls )のポストカード
下:Maurizio Salvi、Gianni Bellenoの写真と、Gianni Bellenoのサイン


今日の1曲
New Trolls / 戦争C'è troppa guerra 1972年イタリアLP最高位8位
New Trolls / Chi mi può capire 1972年イタリアLP最高位8位
IBIS Prog Machine
   / It Should Have Been Me(Chi mi può capire) 2007年
IBIS (?) / L'Amico Della Porta Accanto 1973年
New Trolls / Nato adesso 1972年イタリアLP最高位8位
IBIS / Sun supreme 1974年
New Trolls / In St.Peter's Day 1972年
New Trolls
   / Concerto grosso Adagio 1971年イタリアLP最高位2位



 夢のような3日間のイタリアン・プログレッシヴ・ロック・フェスティヴァルItalian Progressive Rock Festivalも終わり、またつらい生活、現実の世界に戻りました。一昨日は示談で被害者に謝りに行き、加害者と一緒に20回以上被害者に頭を下げました。

何百回と聞いた驚愕の名曲New Trolls / Adagioのシングル盤(B面はCadenza)
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 初日のトップバッターはNew TrollsUTでした。New Trollsは3回目の来日で、今回はNico Di PaloとVittorio De ScalziがいないドラムスのGianni Bellenoをリーダーとするグループです。New Trollsは1966年にデビューしたI Poohに1年遅れ、Le Ormeと同じ1967年にデビューしました。New Trollsもいまだに活動しているイタリア音楽史に残るバンドです。

LP Concerto Grossoの内ジャケット
Adagio / Cadenzaのシングルのジャケットの裏面。
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New Trolls Wikipedia
http://it.wikipedia.org/wiki/New_Trolls

 2007年4月にNew Trollsの2回目の来日となるConcerto Grossoライブに行きました。2006年の1回目のConcerto GrossoライブはMaurizio Salviが指揮者で、2007年はNico Di Paloの初来日が目玉でしたがMaurizio Salviは来ませんでした。この2007年の4月の来日のときは自分の体調が悪くなっていったころでした。グッズを買えばサイン会に出れたのですが、誰のサインになるかわからないと言われて止めたところ、後で聞いたら全員のサインをもらえたと知り、サインをもらわなかったことを3ヶ月以上後悔しました。その後体調がどんどん悪化し死線を彷徨ったので、今またNew Trollsを見れるのは感慨深いものがあります。

2007年Concerto Grosso1.2.3の再現ライブDVD


 今回は、3日続けては経済的にしんどいと思いつつも、十代のころのヒーローの一人だったMaurizio Salviの演奏するSun supremeをライブで見たいという一心で高いチケットを買う決意を決めました。昔音楽大学で作曲の勉強をしたくてバイトで150万円貯めたのですが、ピアノが弾けないと無理とわかって諦めました。そんな自分にとって若くしてNew Trollsに参加し、Piccolo Bachとも呼ばれたキーボード奏者のMaurizio Salviは光り輝いて見えました。そのMaurizio Salviの最高作がSun supreme。できれば、今回の来日はNew Trollsではなく、IBISの名前で来てほしかったです。 

 New TrollsUT名義で来日したのでアルバムUTからの選曲が予想されましたが、案の定Studio 〜XXII stradaでスタートしました。Maurizio Salviが右に見えました。ドラムのGianni Bellenoは堂々たる風格です。続いてI cavalieri del lago dell'Ontario。名作と呼ばれるUTですが、私自身はそれほど好きなアルバムではありませんでした。Concerto Grossoの印象が強すぎたからかもしれません。しかし、ライブで聴くUTは圧倒的な迫力で、これがライブバンドとしてのNew Trollsの本当の姿なのだと思いました。
 
New Trolls / 戦争C'è troppa guerra
http://www.youtube.com/watch?v=50DrGeXso9k
4:48静〜6:00動の展開が強烈。

New Trolls / 戦争C'è troppa guerra
http://www.youtube.com/watch?v=xapKHZmTN_s&feature=fvwrel
当時の貴重映像。Alluminogeni、 JET、 JUMBOなどとんでもない映像も含まれている。2:36からNew Trolls。6:30からThe TRIP。かつてNew Trollsが映画Monte Carloで共演したTripのWegg Andersen氏が4月に亡くなりました。R.I.P.



 C'è troppa guerraのリフをライブで大音量で聞きながら、当時Nico Di Paloが目指していたのはLed Zeppelin を超えることだったのではないかと思いました。Led Zeppelinの1stから4thまでのキラー曲や、Deep PurpleのHighway Starなどにはかなわないにしても、New Trollsの曲はブリティッシュ・ロックと同格の素晴らしいものだと再認識しました。当時Nico Di Paloが真剣になるほど、ジャズ的な傾向のあるVittorio De Scalziと袂を分かつことになったのも理解できました。
 そして当時から大好きだった名曲中の名曲Chi mi può capire。Maurizio Salviは最近、IBIS Prog machineとして英語でこの曲を再録音しています。そのことから、Maurizio Salviがこの曲の主たる作曲者であるとともに、彼がUTの中のメロディアスな部分を担い、Nico Di PaloがUTのハードな部分を担っていたのではないかと思いました。

New Trolls / Chi mi può capire
http://www.youtube.com/watch?v=Byf7a1BC560
Nico Di Paloの超人的なハイトーンの名曲。

IBIS Prog Machine / It Should Have Been Me
http://www.youtube.com/watch?v=mYOLlR168nI
2007年に再録音した英語版。

L'Amico Della Porta Accanto収録の「?」。Graciousの「!」が元ネタか


 続いて今回の来日で一番聞きたかった曲のひとつL'Amico Della Porta Accanto。New Trollsは1972年にNico Di PaloとVittorio De Scalziの間で分裂し、New Trollsの名前をどちらが使用するかで裁判沙汰にまでなりました。UTの時点でVittorio De Scarziは1曲しか参加していないことも最近知りました。裁判ではどんな書証や証人尋問があったのか興味深いところです。結局Vittorio De ScalziがNew Trollsを使うことになりましたが、その間にNico Di Paloは「?」という前代未聞のタイトルで、Vittorio De Scalziは「N.T.Atomic System」という名義で(後にNew Trolls Atomic Systemとシールを貼り付けた)アルバムを出しました。L'Amico Della Porta Accantoは「?」の中でも一番の楽曲だと思います。



IBIS(Nico,Gianni,Frank,Maurizio) / L'Amico Della Porta Accanto
http://www.youtube.com/watch?v=B9fKYBghEMU
2:44-4:00の展開はイギリスのバンドには真似できない。ギターのリフはNico Di Paloが、メロディアスな部分をMaurizio Salviが受け持つことで奇跡的な瞬間が生まれたのだろう。

L'Amico Della Porta Accanto LIVE
http://www.youtube.com/watch?v=766_u7K_yQU
最近のライブ。

 時系列的に次の曲はSun supremeかと思ったら予想外に再びUTのNato adessoへ戻りました。Nato adessoのイントロのピアノは高貴な輝きがあって、これもMaurizio Salviによるものだと改めて認識しました。今回、圧倒的な音圧の下で、良い曲が揃ったUTの作品としての素晴らしさを実感しました。

New Trolls / Nato adesso
http://www.youtube.com/watch?v=aU_gU1bJN8k

 ギタリストがアコースティックギターに持ち替えていよいよ一番聞きたかったSun supremeが始まる予感。MCでSun supremeが宣言されました。アコースティックギターがつまびかれました。まさかSun supremeをライブで聞ける日が来るとは思いませんでした。

IBIS / Sunsupreme イタリアンロックで最も完成された作品のひとつ。1974年。タイトルはJohn ColtraneのLove Supremeにインスパイアされたと思われる。


 今回はLP Sun supremeのA面の完全再現。Divinityがなかったのは少し残念でした。イギリスでは、Peter Hammillに誘われてまずLe Ormeが最初のイタリアのバンドとして発売されました。2番目にPete SinfieldによってPFMが、3番目にBancoがデビュー。特にPFMの成功でイタリアンロックがイギリスと同格であることが証明されました。当時ELPは、PFMやBancoを自分たちのManticoreレーベルから発売しながら、彼らの実力を恐れて同じステージに立つことを避けたと言われています。IBISは雑誌Ciao2001で公募して英語のバンド名を採用、Polydorと契約し、Atomic RoosterのRic Pernelをメンバーに迎え、全曲英語で歌い、4番目のイギリス進出バンドとして完全計画を立てていたと考えられます。ドイツのFaustでさえイギリスで発売したPolydorが、なぜIBISをイギリスで売りださなかったのかいまだに疑問です。インドをテーマにした詞がBeatlesより5年遅れてると思われたのか。UNOもフランス、ドイツ進出までで頓挫し、Vittorio De ScarziのNew Trollsもドイツ止まりでした。Red発売直後のKing Crimsonの解散発言に象徴されるように、イギリスで1974年にはもはやプログレッシブロックは時代遅れになっていたのかもしれません。

1974年のKing Crimson / Red


 Maurizio SalviはSun supremeの中で様々な実験をしたと述べています。UTや「?」ではリーダーのNico Di PaloのハードロックのリフとMaurizio Salviの作るメロディーが緊張感をもって対峙していました。それを一歩進め、Sun supremeではMaurizio SalviがNico Di Paloと同格かそれ以上に音楽面でリーダーシップをとり、クラシックの影響を受けたシンフォニックな展開を見せています。
 今回のSun supremeの再現では、一番聞きたかったFlow of the river of the mindの「Into time…」から始まる幻想的なリフレインの部分のアレンジが変えられ、Ric Pernelと異なるGianni Bellenoのドラムスのリズムパターンになっていました。
 Sun supremeの初めての再現ライブは拍手喝采の内に終わりました。

 ここで一旦幕が下りました。
 バイオリンのゲストの深見綾子さんが音を調整しているようです。
 いよいよ次はあれかという予感です。

イタリア音楽史上に残る傑作Concerto Grosso


 幕が上がり、中央のバイオリンの深見さんがConcerto Grosso Allegroのイントロを弾くと歓声が上がりました。もしかしたらVittorio De ScarziのNew Trollsの「禿山の一夜」でもやらないかとも思ったのですが、ここは定番どおりでした。
 2007年にはオーケストラ付で見ましたが、今回バイオリン1本だけでも音を大きめに調整したのかオーケストラのときのような迫力があって感動しました。

New Trolls / Concerto Grosso Allegro & In St.Peter's Day
http://www.youtube.com/watch?v=hnZubCu3xqM&feature=related
イタリアのテレビ史上最高の音楽映像のひとつとも思われるSenza ReteでのNew Trollsのオーケストラ付のライブ。Maurizio Salviのピアノのテクニックも目を見張る。Gianni Bellenoのティンパニも感動的。

New Trolls / In St.Peter's Day
http://www.youtube.com/watch?v=CzK7emgN0gk
原曲よりも感動的な最近の音源と思われるオーケストラ付のIn St.Peter's Day。バックの映像は若き日のNico Di Palo、Vittorio De Scalzi、Gianni Belleno、Maurizio Salvi、Frank Laugelliの勇姿。40年前はロックを演奏すること自体が反体制的なことだった。

 残念ながら今回のライブではIn St.Peter's Dayは演奏しませんでしたが、これもMaurizio Salviが作曲に名を連ねていますが、Vittorio De Scarziが主導だったのかもしれません。2007年のライブでVittorio De Scarziは「In St.Peter's Dayは予算のため、レコードではオーケストラが付けられなかった」と言っていた。

In St.Peter's Dayを収録


 そして問答無用のAdagioが始まりました。
 イタリア音楽史上最大級のキラー曲ではないでしょうか。
 VivaldiやVerdiがもしこれを聞いたらどう思ったでしょうか。

New Trolls / Concerto grosso Adagio
http://www.youtube.com/watch?v=DCgvp6IfE7w
前回の来日と異なり、今回のライブでは、原曲に忠実なエンディングでした。
 
 続いてカデンツァ。日本ではカメリアダイアモンドのCMで使用されました。

New Trolls / Concerto grosso Cadenza
http://www.youtube.com/watch?v=qSloA8u4op4

 そして1976年のConcerto GrossoUからVivace。
 New TrollsのConcerto GrossoUもLe Ormeのように、ベトナム戦争が終わって1971年のConcerto Grossoのときよりも明るく希望に満ちた音に変わっています。

New Trolls / Concerto grossoU Vivace
http://www.youtube.com/watch?v=hLOLHAelOww&feature=fvwrel

 バイオリンの深見さんがConcerto GrossoUの2曲目のイントロを弾くと、突然Maurizio Salviが突然それを制止しました。えっ、何が起こったんだと思ったら、Maurizio SalviはConcerto GrossoのAdagioを再び指示しました。

NEW TROLLS / Concerto Grosso Adagio
http://www.youtube.com/watch?v=S7_kZvL9Kuc&feature=related
当時のTV番組のエンディング。指揮しているのはMaurizio Salviと思われる。



 2007年のConcerto GrossoライブでもアンコールはAdagioでした。やはりこれがMaurizio Salviにとっても一番大事な曲なのだと思うと感動しました。おそらくMaurizio Salviが音楽学校を退学し、ロックで食べていこうと決意したのはNew TrollsのAdagioで受けた衝撃が理由だったのだと想像します。MinaもElvisを聞いたショックでオペラ歌手を止め父の反対を押し切ってロックンロールに転向しました。しかし、プログレは1975年に消滅し、Maurizio Salviは食べていくために産業的な音楽にずっと関わっていたようです。Maurizio Salviも何度かはあのとき音楽学校を辞めずにクラシックを続けていればと思ったこともあったのではないでしょうか。Adagioが彼の原点なのでしょう。
 最後の曲をAdagioで締め、感動の中でライブが終わりました。観客がスタンディングで歓声を上げる中、Gianni Belleno、Maurizio SalviとNew Trollsは自信を持って次のI Poohのライブにつなぎました。

Maurizio Salviがクラシック、特にサティに関心を持っていたことがわかるHP。
http://ilvas.tripod.com/

 キーボード奏者に対して私は無条件に畏敬の念とコンプレックスを感じます。6年前ピアノを習ったときも音をゆっくり均等に弾くだけでも物凄い訓練が必要で、吸収が早い子供の頃でないと上達しないことを身にしみてわかりました。Maurizio Salviは日本で言えばGolden Cupsにおける弟分のミッキー吉野と似た存在かと思います。ガンで亡くなったジョー山中の応援ライブで、30cmの目の前で見たミッキー吉野は全く鍵盤を見ないで弾いていました。ミッキー吉野もそうですが、Maurizio Salviは若いときより貫禄がついてルックスがずっとかっこよくなったと思います。Le OrmeのキーボードのMichele BonとMaurizio Salviだけはメンバー紹介でMaestroと呼ばれていました。

Concerto Grosso収録のベスト


 2日目のLe Ormeのライブの後に予期せぬことが起こりました。Gianni Bellenoが会場にいたのです。びっくりして手持ちのパンフレットにサインをもらいました。初日は、New Trollsにサインをもらえないかと思ってAdagioとLa nella casa dell’angeloのシングルを持参していたのですが、2日目は持ってこなかったので残念です。でも5年前にNico Di PaloとVittorio De Scarziのサインを貰えず後悔したときのことを思うと、35年間の念願がかないNew Trollsのサインが貰え、Gianni Bellenoと握手できて感激しました。Gianni Bellenoの笑顔が忘れられません。

NEW TROLLS - UT とI POOHの今回の来日の楽屋風景
http://www.youtube.com/watch?v=t3tKXu6oMXQ&feature=relmfu
同期生のNew TrollsのGianni Belleno(1967年デビュー)とI POOHのRoby(1966年)。Robyは同じキーボード担当のMaurizio Salviの肩に手をかけています。例えるなら日本のTigersとGolden Cupsのメンバーがイタリアの会場で再会しているようなすごいショットです・

会場のクラブチッタClub citta
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この記事へのコメント
初日も行けたのですね。
私は仕事と予算(笑)の関係でいけませんでしたが、NewTrollsUTは観たかったです。レビュー読んでて思わずコンチェルトグロッソ1を聴きなおしました。何度聴いても素晴らしい作品ですね。最近は歳のせいか涙腺も弱くなってすぐ涙目になります(笑)。
Posted by captaingratt at 2012年05月04日 01:05
ありがとうございます。3日間無理して通いましたので、この4連休は緊縮財政、自宅謹慎です(笑)。早いものでNew Trollsの日からもう1週間たちました。私もCDでConcerto Grosso1を聴いています。
Posted by カンカン at 2012年05月04日 11:42
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