2020年05月31日

癒しのメロトロン Mellotron イギリス編 グレイシャス Gracious 1st LP 1970年

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1970年ワイト島でのGraciousのメロトロンMKU(鍵盤の左・右半分で違う音が出る)


今日の1曲
  Gracious / Heaven 1970年
  Gracious / The Dream 1970年


 やっと緊急事態宣言が解除されましたが、コンサート、音楽フェスティバル、イベント、カラオケなどはまだ回復できません。
 いままで当たり前だと思っていたことが、いかに有難かったかを感じます。

 今回の「癒しのメロトロン」はイギリス編で、1970年のGraciousの1stアルバムを振り返ってみました。Gracious は1969年のKing Crimsonからの影響を受けてポップバンドから音楽性を変えています。

 King CrimsonのEpitaph、In the court of the Crimson King(イアン・マクドナルド)や1970年のIn the wake of Poseidon(ロバート・フリップ)のメロトロンが世界の最高峰であることは, 多くが認めているところだと思います。

 イアン・マクドナルドがベトナム戦争の惨状を見た衝撃からKing Crimsonができたと言われており、ピート・シンフィールドの「混乱は我が墓碑銘」というEpitaphの歌詞とともにそのメロトロンは悲壮感に包まれた厳粛なものです。


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1970年の日本盤のグレイシャスの帯。「結果として生まれたサウンド。それがグレイシャスのクラシックロックですよ」と書かれている。
 
 King Crimsonの1stのメロトロンの使用が3曲で全面的だったのに対して、Graciousの1stでは2曲で、しかも2カ所で部分的にしか使用されていません。しかし、そこではメロトロンMKUの吸い込まれるような陶酔的サウンドを聴くことができます。

 メロトロンの「普及版」M400でさえ日本で1974年に約100万円でした。1960年代に高級楽器として開発されビートルズ、キング・クリムゾンなどしか所有できなかったMKUをたった2カ所だけ自分たちの真の心の「癒し」のために使用した印象を受けます。


Gracious / Heaven
https://www.youtube.com/watch?v=CBW61eKBTHU
1:07からまさに天国のようなメロトロンがオルガンに絡む。

Gracious / The Dream
https://www.youtube.com/watch?v=uSl2O-Nso7g
8:01からのメロトロンが本アルバムの最大の聴きどころ。

Gracious / Introduction
https://www.youtube.com/watch?v=53Vs5rn9W1I
アルバム1曲目の冒頭はEkseptionのようなチェンバロが美しい。

 Graciousの1stアルバムは、もともとビートルズを目指して書き溜められた小曲集が、キングクリムゾンの大曲主義とメロトロン、ナイスなどのクラシックから引用する手法などからの影響で再構成されたように思えます。

 



Gracious ‎- Once On A Windy Day (1970)
https://www.youtube.com/watch?v=jQ4nVUD-fyE
LP未収の1970年のシングルは、フルート、ストリングスのメロトロンが使用された佳曲。


 ELPがデビューした1970年のワイト島フェスでのGraciousのMKUの貴重映像が発掘。曲は1971年の2ndアルバムに収録されるSuper Novaと思われます。2ndでのメロトロンは1stアルバムと異なり、全面的かつ攻撃的なタッチで使用されています。

Gracious at the 1970 Isle of Wight Festival
https://www.youtube.com/watch?v=sbf_5kV73I8
13:15から癒し系のストリングス・メロトロンが聴かれる。


 ビートルズ、キング・クリムゾンとともにグレイシャスのMKUはブリティッシュロックの記憶に残るでしょう。


MKU、M400などのメロトロンの歴史が語られるDVD



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posted by カンカン at 22:31| 神奈川 ☁| Comment(0) | メロトロン Mellotron  | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月13日

音楽の夢 〜 追悼 Kraftwerk フローリアン・シュナイダー 〜 癒しのフルート

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LP Ralf & Florianのジャケット裏側の写真 1973年の伝説のKling Klangスタジオ


今日の1曲
  Kraftwerk  Tongebirge 1973年
  Kraftwerk  Tanzmuzik Live 1973年
  Kraftwerk  Autobahn 1974年


Michael Rother (Kraftwerk, NEU! Harmonia)による追悼文
フローリアン・シュナイダーのフルートの魅力についても触れている。
https://www.uncut.co.uk/features/blogs/read-michael-rothers-eulogy-to-florian-schneider-126501/?fbclid=IwAR0e1dSd7HBHNJduV1ZHkxNWfEOlE4cmGTyFW5s996YvWp6ax7N9xgjrrPY


 Kraftwerkのフローリアン・シュナイダーが亡くなりました。Kraftwerkは「テクノのゴッドファーザー、テクノのローリングストーンズ」とも言われますが、私がクラフトワークで最初に買った3rdアルバムRalf & Florianは、まだMini Moogなどを使用せず、フルートの響きが美しいサウンドでした。

 少ない小遣いで買ったレコードは宝物でしたので、思い出深いです。
ノートによると1975年7月31日に西武渋谷B館地下1階にあったCiscoの前身Be-inで、ドイツ盤のRalf & Florian、同時にアメリカ盤のNEU! 75も買っています。

 これらは、BeatlesのLet it beから数えて14番目、15番目ぐらいの自分で買ったLPだったと思います。クラフトワークの1st〜3rd、ノイはまだ国内盤は出ていませんでした。初めて国内盤のクラフトワークのアウトバーンが出た頃です。

Be-inからの Ciscoの歴史を初めて知ることができた本



 当時、クラフトワークの情報は、ほぼ皆無でした。
 雑誌Music Lifeで、以下の記事を読んだだけでした。

  ダモ鈴木「クラフトワークって人気があったんだ。もう解散しちゃったけどね」1973年
  エノ(イーノ)「ノイ、ハルモニアなどドイツのグループが素晴らしいです」 1974年 

最初のKraftwerk研究書の出版は1999年。Neu!との関係などが解明された。



 LPを買うきっかけは、1975年6月に買ったTangerine DreamのPhaedraの解説です。このライナーは素晴らしいもので、間章はドイツロックを体系的に紹介し、その分類の中でこう書いています。

  「ノイ クラフトウエルク (どちらも二人だけのグループで電子機器と様々な楽器によって実験的即興演奏を行う注目すべき音楽性をもつ)」





 初めて入ったBe-in で、Ralf & FlorianとNEU! 75だけみつかりました。Be-inのレコード袋は黒い紙だったと記憶しています。輸入盤は初めてでした。Be-inでは、その後10月に「アモン・デュールU / 狼の街」の国内盤を買いました。3枚とも素晴らしかったのでBe-inは良き思い出です。買った時を想像すると、癒される気持ちになります。

1970年代前半と思われる渋谷西武Be-inの広告。レコードだけでなくヒッピームーブメントの関連商品を扱っていたことがわかる。レコード袋には右下のロゴが印刷。
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 Ralf & Florianは特大ポスター付きで音も素晴らしく、2人の写真は(このときは)好青年、他方NEU! 75は最初は音にがっかりし、写真も病人のようでした。
 しかし1976年に聞いた回数は、NEU! 75とFocus / Hamburger Concertoがトップで、Focus / Moving Wavesが3位、Ralf & FlorianとPhaedraが5位でした。初めはいい加減な音楽と思ったNEU! 75のHeroの細部の凄さに引き込まれました。後にデビッドボウイがHeroesを作るきっかけになるとは想像もつきませんでした。

 ベトナム反戦など反体制活動が世界で最も過激だったドイツで、Kraftwerkもまたその音響上の活動体であると自認していました。
 1972年までの作品や、ライブ音源、後のNEU!の2人とフローリアン・シュナイダーの3人によるライブ映像などでは過激な電子ノイズとドラムスが中心になっています。


1971年〜1972年のRalf不在の激動期も詳しく解明された本。



 しかし、Ralf が復帰した1973年のRalf & Florianは、理想郷を求めるようにLP全てがクラシックに通じる穏やかさに包まれています。Moogシンセサイザーの先駆者から1972年にアコースティック路線に転換し、当時絶賛されたPopol VuhのHosianna Mantraからの影響も感じられます。
 
 そこで、フローリアン・シュナイダーへの追悼として、思い出深い3rdアルバムRalf & Florianの全曲を、45年前の記憶を辿りながら振り返ってみました。
 その中から、癒しのフルートの曲を思い出してみました。


Kling Klang スタジオのイラスト(Ralf & Florian付録ポスターより) 
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Kraftwerk / Ralf & Florian 全曲
https://www.youtube.com/watch?v=YMdd1B9Q1wg

0:00 A面1曲目 Elektrisches Roulette 
 1975年、冒頭のエレクトロニクスの音は全く斬新だった。しかしフルートの主旋律は親しみやすく、表現はコミカルだった。この1か月前の6月30日に買ったベルリンのTangerine Dream / Phaedraの内宇宙に向かうシンセサイザーの世界とは全くアプローチが異なっていた。この音こそがベルリンの壁で閉鎖された中と外の違いなのだろう。

4:24 A面2曲目 Tongebirge 
 続く2曲目で完全にKraftwerkの世界に引き込まれた。癒しのフルートとシンセサイザーの共演は、他に類のないオリジナリティー。今聴いても新しい。Tangerine Dream / Alpha Centauliのフルートからの影響も感じる。Florianはクラシックの学校でフルートを学んだ後に、1960年代はジャズのバンドでもフルートを吹いていた。

EmilによるElektrisches Roulette, Tongebirgeのイメージイラスト、譜面
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7:17  A面3曲目 Kristallo
  2曲目からリズムの入った3曲目への展開が見事で、このLPを買ってよかったと心底思った。エレクトリックチェンバロとも言えるキーボードとシンセリズムの絡んだ音は聴いたことがなかった。ビートルズの影響を感じるテープの逆回転も新しかった。それまで聴いていたELPなどのProgressive Rockの音楽性とドイツのそれは全く異なっていた。

13:37 A面4曲目 Heimatklange
 A面ラスト4曲目は再び動から静へ戻り、ピアノとフルートの曲で癒される。それはB面への導入部とも言える。1st、2ndの過激な音から離れた穏やかな音と曲構成は、Popol VuhのHosianna Mantraからの影響を強く感じさせる。

17:21 B面1曲目 Tanzmusik
 このLPの中核になる曲。この曲は国内盤がなかったにもかかわらず、当時DJで人気No1だった落合恵子のラジオ番組のテーマソングに使用されていて驚いたが、違和感がなかった。Kraftwerkの音楽が革新的でありながら普遍性があったのはメロディーが美しかったからに他ならない。この曲のリズムのサウンドは次作アウトバーンへの布石となる。タイトルは「ダンスミュージック」。CanはJames Brownからの影響を公言しているが、Canの後輩になるKraftwerkも黒人音楽の影響を受けていたのであろう。KraftwerkがHiphopにまで影響を及ぼすとは1975年には想像もつかなかった。

24:00 B面2曲目 Ananas Symphonie
 Tanzmusikの緊張感から解放されたこの曲は、45年前はほとんど聴かなかった。イラストのポスターでは南国の海をイメージしていた。今回初めて最後まで聴いたが、1st、2nd にで聴かれた過激な実験的ノイズから離脱した脱力的な音楽であり、ベトナム反戦などの時代背景からの決別とも感じられる。初めてヴォコーダーを使用した曲。

★ Kraftwerk / Tanzmusik 1973 Live映像
https://www.youtube.com/watch?v=UIbSkw4yvec
Ralf & FlorianのB面1曲目Tanzmusikのライブ。A面最後4曲目Heimatklangeをイントロに置いて、フルート入りにした渾身のアレンジ。3人目のメンバーが電子ドラムを初めて使用したライブであり、Autobahnへの架け橋となる歴史的な貴重映像。


〜 Kraftwerk / アウトバーンAutobahn 〜


 1975年7月にRalf & Florianを買った前後に、クラフトワーク4枚目の作品アウトバーンの国内盤が発売されました。幸運なことにFMラジオでアウトバーン全曲の放送を録音でき、そのカセットテープは宝物になりました。
 アウトバーンのLPを買ったのは1977年12月8日で、青いジャケットのイギリスVertigo盤でした。今はオリジナルドイツVertigo盤よりもそちらの方が公式ジャケットになっているようです。

 アウトバーンは良曲ばかりで、A面に大曲を置く構成は、Tangerine DreamのPhaedraからの影響が感じられました。
 先週体調を崩し非常に苦しい状態に陥りました。そこで、昔、何回も聴いたアウトバーンについても、癒しの観点から45年ぶりに聴きなおしてみました。


Kraftwerk / Autobahn (2009 Remaster)
https://www.youtube.com/watch?v=vkOZNJYAZ7c&t=1165s
1:18 テクノの夜明けとも言えそうな美しいテーマ
3:21 グルーブ感のあるシンセサイザーリズムはPhaedraからの影響と思われる 
3:30 この曲では序盤でのみ、癒しのフルートが使われている。
8:15 ここからメロディーのない鋼鉄のビート。Man Machineの始まり
14:30 前作Ralf & Florianのキーボードの音
16:50 スローからアップテンポへ。ラストまで美しい展開。
19:00〜19:30 個人的にはKraftwerkの最高到達点。リズムはNEU!のFür immerそのもので、初期Kraftwerkに与えたKlaus Dingerの影響を感じさせる。ダモ鈴木もKlaus Dingerの存在が際立っていたと言っていた。KraftwerkはAutobahnの世界ツアーにMichael Rotherを誘ったがRotherはNEU! Harmoniaの活動を優先させたという。

 Autobahn のB面の「大彗星」はPart1で半分に落としたスピードをPart2で元に戻すというもので、これもNEU!2からのアイディアといえます。最後は朝の散歩というフルートの穏やかな音楽だったと記憶しています。




 1976年8月3日にKraftwerkの1st、2ndのドイツ盤を購入。カラーコーンを使った赤と緑の素晴らしいジャケットでした。しかし、メロディアスな3rd、4thを聴いた後にこれらを聴くと極めて実験色が強く、メロディーがないため、ほとんど聴きませんでした。
 ただ1st、2ndとも1曲目はRuckzuck、Kling Klangという後のテクノリズムの原型となる重要な曲が収録されています。

 最後に買ったクラフトワークのLPは5thアルバム放射能でした。
 
Kraftwerk - Radioactivity
https://www.youtube.com/watch?v=M0D7MBBI2Ik
RadioactivityのLPからはこの曲だけ繰り返し聴いた。2:00から2:40までメロトロンのようなコーラスの和声進行に癒される。モールス信号のようなサウンドを担当しているのがフローリアン・シュナイダー。




 
 クラフトワークの1stから5thまでのLPは深い記憶に刻まれています。

 RIP Florian Schneider


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posted by カンカン at 20:56| 神奈川 ☀| Comment(0) | ドイツのロック German Rock & Kosmische Musik Cosmic Music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月05日

癒しのメロトロン スペイン編 Mellotron in Spain 1974年 ベトナム戦争終息への時代

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Music Life 1974年6月号でのメロトロンの広告。当時の価格が887,000円 (9000Euro) 。


今日の1曲
 Canarios – Ciclosより「春」1974年
 Eduardo Bort – Yann 1974年

 前回、1974年のエディ潘とオリエントエクスプレスの 9 O’clockで、メロトロンの癒しの力に改めて気づきました。デイブ平尾やエディ潘は、ゴールデンカップスの時代背景にはベトナム戦争があったと語っていました。

 1974年はベトナム戦争が終息に向かっていく時期であり、9 O’clockのメロトロンにも緊張から解放されるような安らぎが感じられます。
 そこで、昔好きだったメロトロンの作品をもう一度振り返ってみました。

 1974年にはスペインでもメロトロン入りの傑作が2作発表されています。ロス・カナリオスは1960年代からのビートバンドでしたが、突如ビバルディの四季をアレンジした2枚組のLPシクロスCiclosをリリース。

 なぜか日本ではLP1枚に編集され別ジャケットで発売されました。
 私が入手した2枚組ドイツAriola盤は、タイトルがCyclesで豪華なブックレットもついていました。

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 シクロスでは、シンセサイザーやメロトロンを多用していますが、今でも唯一印象に残っているのは、「春」の第3楽章の1カ所で感動的に使われるストリングスメロトロンです。昔もそこばかり聴いていました。

Canarios - Ciclos (Álbum completo)
https://www.youtube.com/watch?v=Za4DxmWkPak
13:20〜13:55 本作品中、最も印象的なストリングスメロトロン





 スペインのメロトロンではEduardo Bortも素晴らしい。最近来日して日本でもライブを行っています。最後の曲Yannの最終パートでは、フルートとストリングスを混ぜたようなメロトロンの哀愁漂うメロディーに癒されながらフエードアウトしていきます。

Eduardo Bort - Yann
https://www.youtube.com/watch?v=V4kxSmlVb28
8:35からラストまで癒しのメロトロン。宇宙でギターを弾くジャケットの世界が広がる。


オリジナルLPはジャケットが縦に拡がって、宇宙にBortが座っていたと思います。



 Los Canarios、Eduardo Bortのメロトロンは、いずれも1974年のベトナム戦争の終息と安らぎへの音と言えるでしょう。
 コロナの戦いも早く終息に向かうことを願うばかりです。

「免疫力を高める生活をしましょう!」(所沢市のホームページより)
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kenko/karadakenkou/hoiryo20200316135050451.html


 Eduardo Bort は今年亡くなっていたことがわかりました。
 一度だけ「今、Yannを聴いています」というメールを交換したことがありました。
 RIP Eduardo Bort (1948-2020)

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posted by カンカン at 19:51| 神奈川 ☁| Comment(0) | メロトロン Mellotron  | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする