2017年12月10日

追悼 RIP MARIÁN VARGA 音楽の夢 音楽の力


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マリアン・ヴァルガの最後のコンサート


今日の1曲
COLLEGIUM MUSICUM : Hommage à J.S. Bach
 COLLEGIUM MUSICUM /Prelude in C-major - 2 miniratures and a part of the Romeo and Juliet balet
 THE NICE/Bach :Brandenburg concerto N.o.3
 Ekseption & J.S.Bach - Air


 チェコスロバキアのロックキーボード奏者MARIÁN VARGAが2017年8月9日に70才で亡くなりました。今年私は1月2月が体調不調で1回しかブログの更新がなく、3月に入って最初のブログが偶然COLLEGIUM MUSICUMだったので感慨深いです。

 驚いたのは、MARIÁN VARGAが闘病中の今年の4月19日のライブ演奏の映像です。彼は鼻にチューブを入れ病棟から出てきたような姿でHommage à J.S. Bachの1曲だけを震える手で鬼気迫る演奏をしています。

MARIÁN VARGA 70
https://www.youtube.com/watch?v=U91PxCNkK88
2017年4月19日、車いすでのオリジナルメンバーとの70才のライブ


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 本田美奈子さんが亡くなる直前、作詞の岩谷時子さんや看護師さんのために病院で歌った声をテレビ番組で聞いたことがあります。しかし、MARIÁN VARGAのような状態でコンサートホールで演奏している映像を見たのは初めてです。 

 MARIÁN VARGAは1947年1月29日生。チェコスロバキアは共産主義国でしたが、1968年にプラハの春という西欧文化に触発された改革が起きます。1965年にアメリカの詩人アレン・ギンズバーグが2か月間プラハに滞在したことも影響を与えています。そこで、ソ連国内やポーランドへの西欧化の反動の影響を恐れた旧ソ連がチェコスロバキアに1968年8月20日に軍事介入しました。

プラハの春 wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8F%E3%81%AE%E6%98%A5

 1960年代にチェコスロバキアでもBeatlesの影響で、ビートグループや反体制シンガーが現れ、Collegium Musicumは、1968年のプラハの春、ソ連の軍事介入直後の1969年にMARIÁN VARGAを中心に結成されています。MARIÁN VARGAは以前から重要なシンガーたちのバックを務めていました。

 しかし、ソ連の介入によってプラハの春を代表するシンガーが演奏できなくなり、地下に入ることになりました。コレギウム・ムジカムもマスコミを通してコンサートの告知をすることができなくなっていました。

Collegium Musicum  wikipedia
https://sk.wikipedia.org/wiki/Collegium_musicum_(slovensk%C3%A1_hudobn%C3%A1_skupina)

 
 Collegium Musicumの最初のEPで、1st LPの1曲目がHommage à J.S.Bachでした。バッハのサラバンドをロックに編曲したもので、明らかにKeith EmersonのNiceのブランデンブルグ協奏曲からの影響が現れています。

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Hommage à J.S.Bachを演奏するマリアン・ヴァルガ

COLLEGIUM MUSICUM : Hommage à J.S. Bach (1973 version)
https://www.youtube.com/watch?v=CovEQsaAWkk
一番音が鋭い1973年の再録音盤。


チェコスロバキアのロック史上第2位に選出された1stアルバム



Johann Sebastian Bach Sarabande con Partite C dur BWV 990
https://www.youtube.com/watch?v=hx0xED7cb9A
6:46からがHommage à J.S.Bachで引用された部分。





THE NICE/Bach :Brandenburg concerto N.o.3 1969 Live
https://www.youtube.com/watch?v=msX_v0s79oU





 1969年の段階では、NiceとCollegium Musicum の音は互角のレベルではないかと思います。しかし、1970年代に入ってKeith EmersonはELPでMoog Synthesizerを導入し、Carl PalmerのドラムとGreg LakeのVocalで大きく飛躍しました。

 ELPの1stでは、未開人のバルトーク、ナイフエッジのヤナーチェク、フランス協奏曲などが単なるコピーを越えています。展覧会の絵やホウダウンでも攻撃的なMoogがJimi Hendrixのギターのようにバンドを煽情しています。
 
 Collegium Musicumと同じ時期にNiceの影響を受けたのがオランダのEkseptionで、デビュー曲のベートーベンの「The5th」は6週間オランダで1位になりました。クラシックの原曲を越えようとする美しい旋律が練り込まれているのが魅力です。

Ekseption & J.S.Bach - Air
https://www.youtube.com/watch?v=gqufpeDjDtQ
1:17など、リーダーのリック・ヴァン・ダー・リンデンはクラシックの原曲のコード進行で、「アドリブ」を超えたもうひとつの旋律を作ろうとしていた。




 私がCollegium Musicumを最初に聞いたのは1977年ごろでした。その頃、東欧のレコードを扱っていたのは、銀座のガード下にあった店ぐらいでした。1975年のライブ盤でしたが、ELPと比較して「東欧は遅れているなあ」という印象でした。

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LPから録音したカセットは今も持っている

Marián Varga & Collegium Musicum
https://www.youtube.com/watch?v=tfgBe9wYgo8
23:55からプロコフィエフの美しい旋律Prelude in C-major - 2 miniratures and a part of the Romeo and Juliet balet

 しかし、その中でもB面のプロコフィエフを編曲した1曲目の冒頭は、ハモンドオルガンだけとは思えない音色を駆使してEkseptionのような別世界に連れて行かれました。そこにMARIÁN VARGAのELPに対する執念が感じられます。





ELPへの対抗か?これは驚き。ハモンドオルガンでMoogのような音を出すマリアン・ヴァルガ
https://www.youtube.com/watch?v=uDXo7OTwzto


 それから40年経ち、YoutubeでCollegium Musicum/Hommage à J.S.Bachを発見し感動しました。この「プラハの春」直後のデビュー曲が、結局彼らの生涯の最高傑作であり、MARIÁN VARGAが4月19日に人生の最後に演奏した曲となったようです。


Collegium Musicum - Hommage à J.S.Bach 2009 live
https://www.youtube.com/watch?v=sleNjIk9Ukw
2009年のライブ。このときは全員が生き生きとしていた。

 最後のライブでMARIÁN VARGAがHommage à J.S.Bachを弾く姿をCollegium MusicumのDrums,BassとGuitarのオリジナルメンバーが見る目は、2009年のライブのような笑顔ではなく、あるミュージシャンの死を看取る家族のようです。

 キースエマーソンは昨年3月に自殺する前に家族に、4月にコンサートを行う「日本のファンに満足な演奏をできない」という悩みを話していたと言います。MARIÁN VARGAの最後の演奏はKeith Emersonに対するHommageだったのでしょうか。RIP


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posted by カンカン at 11:46| 神奈川 ☁| Comment(0) | ユーロピアンロック&ポップス European Rock & Pops | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする